雑食思想の溜め池

生活していれば自然と湧き出て来る思いの数々。ここは、ぼくの中でゲシュタルト形成や拡張へ向けて流れ着いた、様々な興味の源泉からの思想が集う場所である・・・。と意気込んで始めたものの、だんだんとその色が薄くなってきました。

豊中マトリョーシカ

いきなりですが、「北山村」という村を聞いたことあるでしょうか。もちろんそこにお住まいの方やその付近の方はご存知でしょう。
日本「唯一」の「飛び地」として有名な三重県にある和歌山県の村らしいです。
状況が見えますか?
「北山村」も、「飛び地」も初耳という方のためにちょっと説明を…。
その村は和歌山県に属していながら、周りを三重県に囲まれているということです。
ぼくが飛び地というものを知ったのは数年前。
その当時かなり珍しく感じたため、以来記憶にとどまっておりました。
飛び地とは要するに、陸路では別の行政地区を通過しないと
本体の行政地区に行けないような地理的状況の土地のことです。
アメリカ合衆国にとってのアラスカ州が一番わかりやすいでしょうか。間に別国のカナダがありますね。

さて、以前住んでいた大阪の豊中市での出来事。朝の通勤時に自宅最寄りの駅へ向かっていると、一人の市議会議員さんがビラを配っていました。
ぼくはとりあえず、その人のビラを受け取り、ポケットに突っ込み、その手で定期券に持ち替えて、手を引き抜いて改札機にピタッと触れパッと華麗にゲートを通過。
電車に滑り込みました。
ホッと一息ついたところで、ポケットに手を入れると先ほどのビラが。
とりあえず議員さんの給料は市民が払っているといえるので、彼らの活動はちゃんと見ておかないと…とか偉そうなこと考えながらそのビラを読んでみました。フムフム…。フムフム…?…!?
と、最後のところで、目が止まりました。
なんと、豊中にも飛び地があるというではありませんか。
どこかで聞いた「唯一の飛び地」は和歌山県だけじゃないのか!

だいたい地元にそんな珍しものがあるのに、何で今まで知らなかったんだ!
そこで豊中の飛び地を調べてみると、何と何と、うちのすぐ近くではないですか。
なにゆえか、だんだん鼻息が荒くなってきました。
ぼくはまだ大阪に来て10年。
もしかしたら大阪(豊中)ネイティブなら知っているのか?
「ああ、あそこね。みんな知ってるよ」的に。
ところがそれはあまり知られていないようでした。
それもそのはず、なぜならそこは、伊丹空港の敷地内にあるから、誰も住んでいないただの土地なのです。誰の生活にも影響を与えない、そんな友達も知人もいない、誰も気にしない、だから誰も知らないのでしょう。

とはいえ、そこは飛び地ファンにはかなりレアな飛び地で、
豊中市の中にある池田市の中の豊中
らしいのです。
わかりますか?
いわば、豊中市マトリョーシカですよ。
いや、池田市豊中市がコラボしたマトリョーシカ
しかも、その池田市の飛び地はその付近にいくつもあるのです。
伊丹市もあります。
こんな風になったのはどうやら豊臣さんの太閤検地のためという説が有力なようです。
そして、阪大豊中キャンパス付近の池田市には今度は豊中市石橋麻田町という飛び地があるのです。
そこはれっきとした居住区なので住民がいらっしゃいます。
とまあ、ちょっとググってみると大阪の岸和田市にも…。
ウィキってみると、かなりの数が飛んでることがわかりました。
そう思ったら飛び地ってあまり珍しいことではないのではないか。
やけにハイテンションになっていたぼくは若干、何だか勝手に「乗せられた感」を覚えてきて、だんだんとしぼみ始めました。
じゃあ、最初の北山村の「唯一」とはいったい何だったんだ?
もう少し根気よく調べてみると、どうやら「日本で唯一」自治体全体(おそらく、県の一つ下の規模)が飛び地になっているということらしいです。
つまり豊中市の一部が飛んでいるのではなく、「大阪府豊中市」全体が兵庫県にあるようなものですね。
「おお!」少し元気を取り戻しました。
いやあ、勉強になったような、ならなかったようなお話でした。

ところでそのビラにはどんなつながりで飛び地の話が書いてあったんだっけ?
議員活動のチェックとか偉そうなこと言っていながら、大事な活動内容を再確認しようと思ったときはもうすでにそのビラはどこかに飛び散った後でした。