雑食思想の溜め池

生活していれば自然と湧き出て来る思いの数々。ここは、ぼくの中でゲシュタルト形成や拡張へ向けて流れ着いた、様々な興味の源泉からの思想が集う場所である・・・。と意気込んで始めたものの、だんだんとその色が薄くなってきました。

誇れたのはただ…

初黒星

ぼくの歯は、比較的強いようで、小中学生のころは歯科検診で虫歯が一本も見つかりませんでした。

今の学校でこういう儀式があるのかわかりませんが、なぜか虫歯がない生徒が毎年朝礼の時に表彰されたんですね。

そんな時代を過ごしたぼくは、小学生の頃は毎年表彰台と化した朝礼台にあがってました。

それまでの人生の中で数少ない自慢できることや表彰理由が、この「虫歯がない」ということだったのです。

大工事過ぎてません?

それゆえ高校生のころ、初めて虫歯が見つかったときは、まるで勝負事で初めて黒星をつけられたかのようにショックだったのを覚えています。

それも一気に3本でした。

歯医者さん曰く、小さいものだから心配ないとのことだったので、虫歯をちょっと削り取って小さな詰め物をするだけだろうと、自分を慰めていました。

ところが処置が、進んで行くうちに段々と不安が大きくなってきました。

虫歯を削ると言って削る時間、体感する掘削量が想像よりもかなり大きかったのです。

ぼくはそれまで、母親に見せてもらったことのある直径1mm程のホクロのような虫歯の詰め物を想像していたので、その程度のものだと思っていたのです。

ところが、施術台に体を委ねながら削られた直後にウガイをしたとき、舌で触った歯に大きな溝を感じました。そして処置が終わってみると歯には銀色に光る十字の詰め物が入っていました。

「えっ!こんなに削る必要ある?」と今まですべて完璧な自前の白い歯が一気に醜く感じた光景でした。

連覇がかかるアスリートのふり

よく思い出してみると、小学生の頃…というか、虫歯が見つかるまでは、歯科検診というと毎年「今年も虫歯無し」という一つの「勝利」を得られるかどうかというちょっとした緊張感を覚え、勝利を勝ち取ったときは「連覇」したというちっぽけな誇りを持ち帰り、どういう訳か両親もそれを共感してくれていました。

おそらくそういうメンタリティーだったせいか、一度「キズ」が付いた後は、虫歯が多少見つかったとしてもいいやという、まるで無敗の連覇を続けてきたアスリートが負けてそれまでの勝たなくてはいけないという重圧から解放されたかのような気持ちでした…。

と、言ってみたもののアスリートの本当の気持ちは知りません。

単なる想像です。