雑食思想の溜め池

生活していれば自然と湧き出て来る思いの数々。ここは、ぼくの中でゲシュタルト形成や拡張へ向けて流れ着いた、様々な興味の源泉からの思想が集う場所である・・・。と意気込んで始めたものの、だんだんとその色が薄くなってきました。

奇跡のフードがくれた1年間への経緯から最期まで

f:id:Cenote:20200408143150j:plain

念のため、タイショーがどのような体調の経緯を辿ったか少しだけ、シェアしたいと思います。同じように該当するにゃんこ族の参考になればと思います。

タイショーの誕生日である今日に記念として記事にします。

はじまりは尿路結石

うちでは、まず、譲り受けた日から人間の食事は絶対に与えませんでした。そして雄ネコということで、尿路結石ができやすいということは知っていたので、できるだけマグネシウムが少ないフードを与えていましたが、メーカーやその他の条件は気にしていませんでした。

そして2011年に膀胱に溜まった結石(シュウ酸カルシウム)の摘出手術をしたときに初めて結石にもストラバイト(アルカリ性尿)とシュウ酸カルシウム(酸性尿)があることを知りました。その後フードには、さらにこだわるようになり、様々なメーカーのフードを検討した結果、サイエンスダイエットの特定症状向け療養食のC/Dをメインにロイヤルカナンの療養食をサブで与えるようにしました。つまり与えられるのは1択もしくは2択だったのです。ところが2年後に同じ結石(ストラバイトではなくシュウ酸カルシウム)が再発しました。このフードを与えていて再発するのはおかしいと獣医さん言われましたが、体質には敵わなかったとしか言いようがありません。同時に腎臓の数値が異常に上がっており、今度は尿路結石よりも腎臓のケアが主軸になりました。フードもロイヤルカナンの腎臓ケア用療養食に変更になりました。さらに、定期的な点滴をすることになってしまいました。

体調の悪化とフードのランク下げ

2015年から2016年の年末年始頃になると、体調が少し悪くなり、同時に味覚が変化するのか、今までのフードに急にそっぽ向いたりするようになることがありました。そこで他のメーカーの第2、第3候補のフードを用意するようになりました。飽きてしまい選択肢がなくなるのは避けたかったのです。しかしそれでも急激に食欲が落ちてきたときなどは、とにかく何か食べないといけないと獣医さんからも言われていましたので、国内ブランドの添加物満載の総合栄養食を与えることになりました。ぼくらの知識もだんだんと蓄積されるようになって来たころ、最終的にはおやつ的な、ぼくらからしたら絶対に与えたくないものへと、次第に品質のランクを下げて手を出すことになりました。

衝撃のフード事情

体調不良が少し目立ち始めて数か月経った頃、足腰が弱ってきて、それまでヒョイと身軽に飛び乗っていた床とベッドの段差さえ、ある日届かなくなってしまったのです。

そんな状況を判断しようと家内が、いろいろと調べていく過程で怖い記事を発見しました。それはキャットフードの原材料についてでした。それまでチキンミールなどのミートミールというものが何であるかなど特に気にしていませんでした。普通に「食事」という英語をカタカナにしただけだと思っていたからです。

ところがそれがエサとは思えないものを主原料にして製造されたものであることを知ったのです。安価に売られている食事は特そういうものでした。ゾゾゾッっと背中を虫唾が走る思いを感じました。もしかしたらこの急激な足腰の弱りはそんなものも影響しているかもしれない。もともと弱って来ている体なのだから少なからず影響するだろうと勝手に思いを巡らせ、影響していなくても知ったからには与えたくないと思いました。

それでも何かは食べて欲しい。そんな八方塞りの時に、ぼくらはそれなら一度手作りフードを作ってみようということになりました。そしてぼくは手作りフードの研究を始めたのです。

食欲不振と手作りフード開発の競争

しかしタイショーの食欲はだんだんと下がって行きます。与えたくないフードでもとりあえずは食べておいて欲しい。そう思いながらも、ついには、お椀に入れて目の前に出されたフードを一口食べて、すぐにやめてしまう。何か食べたそうだけども、クンクンしたあとに食べるのを諦めるというようなそぶりの状態が続いていたとき、一つの給餌術を編み出しました。

タイショーは取り敢えず1口は食べてくれる。そして2口目も顔は寄せる。しかし食べない。きっとお腹は空いているいるはずと想像できました。そしてもしかしたら人間でも体調がすぐれない時は味覚がおかしくなってるし、特に唾液は空気に触れると臭くなりますよね?一度手についた唾液を数秒置いて匂いを嗅ぐと臭いというあれです。それに似たことがもしかしたらタイショーも感じているんじゃないか?ネコの唾液は特に臭いと思ったことはないけれど、それでももしかしたらネコたちにしたら臭いのかも?一度ペロッとしたフードは臭うのかも?そんな勝手な仮説を立て、それなら1口サイズをお椀に入れて、それを食べたら、お椀の底をサッと拭いてお替わりを入れたり、一口ずつお椀を変えたり、とにかく一口ずつフレッシュな状態にしてあげたのです。すると2口目も食べてくれて、3口目も…。そんな感じで少し食べてくれるようになりました。ぼくらは「わんこそば」給餌法と命名していましたが、もしかしたらその仮説は正しかったのかもしれません。誰にもわかりません。いずれにしてもそれで少し食い繋ぐことができました。

一方、手作りフードの研究の方も、獣医さんに勧められた腎臓病用療養食の栄養をヒントに様々な食材の含有栄養素と割合を調べ、いろいろな組み合わせを計算してみました。そしてできるだけその療養食の栄養素の値に近くなるように調合することを試みたのです。そしてある程度の近似値を得られるようになったところで与えてみました。

回復の兆し

どんなフードもかなり拒否する状態だったにもかかわらず、味付けの一切されていない例の5つだけの混合物が、彼の食欲を取り戻してくれたのです。与え始めて1か月が過ぎたころには、足腰の弱りも回復し、容体もほぼ元に戻りました。本当に信じられませんでした。

これらの食材の中では干しエビ(むきエビ)乾物なので塩分無添加とはいえ匂いや塩気が少し強く、食欲増進剤の役割を果たしていたのかもしれません。それともなければもしかしたら、いままで人間の食べるものはもちろん、ネコが狂ったように寄ってくる「高級そう」なフード、ネコのご機嫌を取ろうとでもしているかのようにチューブから与えるペロペロするようなおやつ類は一切与えていなかったため、味覚は野生に近かったのかなとかいろいろ想像しています。

ネコも個性が強いので、すべてのネコに当てはまるとは思いませんが、タイショーにはしっかり当てはまったのでしょう。様態が安定してからは、手作りフードではやはり欠如する栄養素もあるだろうと思い、療養食のフード1缶と足りない分を手作りフードで埋め合わせしたり、そっぽ向いた時などに与えました。

そして約1年後

手作りフード開始から約1年後、多飲多尿が始まりました。この時はまた回復するだろうと願っていましたが、数日が過ぎ、階段の上り下りが大変そうになって4日ぐらい経ったある日、来るべきその時はやってきました。

しかし最期は病魔と苦闘している様子もなく、いつものようにぼくらと一緒にベッドの上で寄り添うように横になったまま比較的短期間に逝ったので、その顔は安らかに見えました。

ぼくらもその1年間は常に覚悟していた状態でしたので、毎日ありったけの愛情を注ぎ悔いのない接し方ができた日々は宝物になりました。