雑食思想の溜め池

生活していれば自然と湧き出て来る思いの数々。ここは、ぼくの中でゲシュタルト形成や拡張へ向けて流れ着いた、様々な興味の源泉からの思想が集う場所である・・・。と意気込んで始めたものの、だんだんとその色が薄くなってきました。

英文解釈の基礎は情報構造にあり(その2:既知情報と新情報)

情報構造とは?

前回、「わかりにくい英文だ」と思われていた文章が、実は情報構造に則って書かれた転倒文である場合、それは情報発信者の優しさだと書きましたが、情報構造とは何でしょうか。

 

omoi-tameike.hatenablog.jp

 簡単に言うと

「既知情報」を文章の書き初めに導入として置く。
「新情報(重点情報)」はできるだけ後ろに置く。

という文章の作り方です。
それは、文章を書いたり話したりする際に、情報がお互いに共有済みのことであるかないかによって、文章の要素となる情報を並べ替えるということです。

因みに、語順が入れ替わる別の文体として倒置文がありますが、倒置文で語順が変わるのはこの情報構造とは異なった理由で語順を入れ替えているので、少し分けて考えた方がいいと思いますが、いずれにせよ、読者を惑わすものではなくスムースに内容を理解するものと考えると、転倒文に出会って「わかりやすい文章を書け!」という気持ちは抑えられるのではないかと思います。少なくともぼくはそれで心は落ち着いています。

英文の常識

英語には助詞がないため、構造(SVOという基本的な語順)が重要であるというのはよく言われることだと思います。
どういうことかというと、文章の中で、動詞の前にあるのが主語で後ろにあるのが目的語であるということがルールとなっていてそれをみんなが共有しているということです。

この基本の裏側には何があるかと言うと…

ここで主語とは何であるかを改めて考えると、テーマや話題ですよね。何についてこれから表現するかを提示しているのが主語ですよね。
だから、”I am..."とくれば、これから自分のことを書くんだな、"You are..."とくれば、これから聞き手のことを書くんだな、と受け手側がわかるわけです。
"I"とは発信者、"You”とは受信者であることは言わずと知れた「既知情報」だから成せる技なわけです。

"Japan is..."と言われたら、「日本」が国の一つであるということを知識として共有している人の間では「既知情報」と言えるわけです。
そして、"is"の後ろに来るものが、発信者が言おうとする「新情報」なわけです。

「既知情報」→文章の書き始めに導入として置く
「新情報(重点情報)」→なるべく後ろに置く

つまり「主語-動詞-目的語」の順序はそういうことが基礎となっている構造なのです。

それゆえに起こってしまうこと
それは、ある文章を書くときに、文章の要素的に、目的語になる情報が「既知情報」で主語になるのが「新情報」である場合、そこに構造的に矛盾が生じるわけです。

語順転倒→主語が長いから転倒するのではない

(この辺でお断り事項として、ここで出している例文は英語ネイティブではないぼくが言いたいことを説明するために作った文なので、完璧ではないかもしれません。)

例えば、次のような文章に出くわした場合、

With the emergence of Beatles came a new music era.

発信者は、ここには書かれていない前文のどこかで"the emergence of Beatles"についての記述をしており、受信者がそれを「既知情報」として認識していることがわかっているために前に出し、"a new music era"を「新情報(重点情報)」として提示したいと思っているのです。

もう少し具体的な想定をすると、この文章の前で筆者はビートルズのメンバーが誰だとか、どんな音楽を演奏していたとかの議論をしていて、そんなビートルズの音楽は今までになかったという「音楽の新しい時代」の幕開けだという風に議論を展開しようとしているということが考えられます。

ここで重要なのは単文として

A new music era came with the emergence of Beatles.

というのはもちろん普通の語順の文章として成り立ちますが、発信者と受信者間における情報の流れ的に"a new music era"が新情報となるために後置されたということです。そして後置されたことで、受信者はそれが重点情報なのだということを認識できるのです。
そして、主語が後置されていることは、文章が前置詞句で始まるという普通のルールに則っていないということからわかるわけです。言い換えると情報発信者はそうやって受信者に分からせているわけです。
そういう意味で、転倒文により発信者が言いたいことがよりスムースに伝達されやすくなるわけです。

よく、「主語が長い時後置される」などの説明がなされていることがあると思いますが、それは多くの新情報を主語に詰め込もうとしたためだとぼくは思います。そして、既知情報はそれより前の文章や段落で書かれていることから、itやtheseなどの指示代名詞で受けることができるために、短くなる傾向にあると思います。

ではこの文章が転倒文であるということにどうやって気付けばいいのか?

それは品詞分解して、普通のSVO文章じゃないと判断するところから始まります。前置詞から始まり、その前置詞句が動詞の直前まで続くので、動詞の前に主語がないことになります。

ということは、逆に何の前置きもなく、とつぜん

With the emergence of Beatles came a new music era.

と転倒文で言われたら、それはルール違反というか、さすがに受信者を惑わすことになると思います。もしくは唐突感を与えることになるのだと思います。

…といったことがこの本↓で説明されています。上記はそこにぼくなりの解釈を加えております。

 

 

 

では次は転倒文となるいくつかのパターンを説明していきたいと思います。

つづく